「空気人形」で感じたことを書きたくなったので、つらつらと‥。
ストーリーに関するネタバレはないつもりですが、多少どうかな、と思うところは白抜きにしてあります。
映画が始まると同時に胸いっぱいの幸福感、清涼感を感じました。美しい透明感のある映像に一気に引き込まれ、ワクワクと胸が躍りました。
最近読んだ雑誌のある女性ライターの方が、『「空気人形」はやはり女性にとってショッキングなシーンもあり、雑誌で紹介することに躊躇もあった。でもやはり素晴らしい作品なので‥』と書かれていたのですが、確かに美しく幸せなシーンばかりとは言えない作品です。
でも、人形が目覚め、成長していくシーンは、人形を演じるペ・ドゥナさんのまさに一挙一投足に目を奪われるといった感じで、温かさと同時に、新鮮な冷たい空気が胸に流れ込んでくるような、そんな幸福感に浸れました。
言ってみれば、人形が心を持ち、その周辺に生きる人々、起こる出来事を描いた‥というだけの物語。
でも、ペ・ドゥナさんの存在と、映像の美しさと、是枝監督のメッセージ性でこんな作品が生まれるのか‥。観ながらつくづく驚きました。
この空間にずっといたい。ずっとずっと彼女を観ていたい。
でもやはり、「空気人形」は夢見心地に浸れるだけのファンタジーではなかった。私の中に残った余韻は、（過去の作品で例えています→）「メゾン・ド・ヒミコ」を見た後に残った、ハッピーなのにどうしようもなく切ない思いと、「悲夢」を見た後に残った、どうしようもなく切ないのにどこかに残る不思議な幸福感‥のどちらも思い起こさせられるような、そんなものだった気がします。
観終えて外に出たら、現実の風景が暫くは違和感のある別世界のように思えたことも心に残っています。

ペ・ドゥナさんは本当にステキ！スタイルだけでも演技力だけでも絶対こうはいかなかったろうな！と思います。
実は思いのほかヌードシーンも多くて、ちょっと驚いたのですが、そういうシーンも含めて、彼女でなければ絶対こんな作品にはならなかっただろうと改めて思いました。
顔立ちに加え、元々瞬きの少ないような印象のあるパッチリした目、伸びやかな肢体、笑った時のなんとも言えない可愛らしさ。
わかっていて観に行ったはずなのに、全編見惚れてしまいました。

ARATAさんも板尾さんもよかった。ARATAさんはイメージも完璧に変えられる人だし、強烈な役もできれば、オーラやエネルギーを消すこともできる俳優さんだという印象がありますが、「空気人形」では、ARATAさんだからこそ、静かに心に残してくれるものがあったような気がします。
板尾さんは、舞台挨拶で司会をされていた伊藤さんが言われていた通りで、決してステキな役ではないですが（笑）、演技云々以前に、板尾さんがこれまでの人生の中で積み上げてこられたものが、寂しさ、凡庸さ、男の人としてのかわいらしさという形となって、自然とにじみ出ていた気がしました。
感心したのはペ・ドゥナさんの衣装。本当に似合い過ぎるほど似合っていて、観ているだけでワクワク（笑）。
でも撮影は確か冬だったんですよね。メイキング映像でも、オダギリとペ・ドゥナさんはダウンを着て寒そうにしていたし‥
映画でも、周囲の人はみんな冬服なのに、ペ・ドゥナさんの存在は軽やかで涼やかで、季節や寒さを全く感じさせない姿につくづく感心しました。

そういえば、衛星劇場のメイキングシーンで、私がステキだなぁ‥と思ったペ・ドゥナさんのシーンは、本編にありませんでした。
またネタバレの方に書くかもしれませんが、DVDのメイキングなどに是非入れてほしいな。（監督も本編ではカットしたものの、やっぱりあまりに勿体なくて、メイキングシーンに入れているのかも？/笑）
オダギリについては何を書いてもネタバレになりそうなので、ここには書きませんが、やはり映画の中での名シーンになっていたと思います。
あと、オダギリの人形師のシーンが終わったからといって、劇中、トイレに立ったりしないようくれぐれも注意を！（笑）

「転々」とはまた少し違う、温かく切ない東京を観せてくれた作品でもありました。
世界15カ国で公開の予定だそうですが、観た人は「東京」にどんな印象を受けるのかな。。
 
他はまた後日、ネタバレの方にでも書けたらいいなと思っています。