現在開催されている「くにたち映画祭2021」で『ある船頭の話』の上映があることがわかり、申し込んだ時点では予定になかったオダギリ監督のリモートトークが追加され‥!と思ったら、なんと当日の会場で「実は急遽来ていただいています!」。そして本当にオダギリ監督が登場!
参加されることになった経緯もとても素敵なお話で、その他、いろいろなお話を50分近く??話してくださったので、「書かないでね」なお話以外、簡単な形で載せてみようと思います。


■11/13(土)『くにたち映画祭2021』
くにたち芸術小ホール 
映画上映18:30〜20:50
ゲスト:オダギリジョー監督


司会は映画祭実行委員の小川さんという女性。落ち着いた話しぶりながら、映画愛に溢れたノリのいい方で、オダギリ監督も(お酒も入っていたこともあって笑)楽し気なのんびり口調で、あはははは!と大きな声で笑ったり、大きな反応を返されたりと、予定を10分ほど超過しての50分間、とても楽しく濃いお話を聞かせてくださいました。
(小川さんも素敵なお話をたくさんされていましたし、お二人の雑談のようなものもあったのですが、その辺は抜けています)
青文字はオダギリ監督


Q:(東京都)国立(市)という街のイメージは?

清志郎さん。清志郎さんは昔から好きだった。晩年は共演もあったり、交流もあった。(清志郎さんの話で大きな拍手が起こり、「地元色強めですね〜笑」という感じに笑っていました)
僕のいとこが10年くらい前、国立に住んでいたので特別な場所。

小川さん:『ある船頭の話』のアメリカでの公開が決まったそうですが。

そんな大げさな話ではなく、ここで上映してくれる方が大きなニュース^^(小川さん大喜び、会場からも拍手)
この映画は本気で作ろうと思って、それを改めて大きなスクリーンにかけてもらって嬉しい。
DVDも発売されて、こういう機会がないので、本当は僕も観たかったが、エンディングだけ裾から観た。エンディングだけでも胸が熱くなった。

その後、小川さんの『ある船頭の話』を最初に映画館で観たのは新潟‥という話から、新潟の映画館、酒蔵の話などで盛り上がるお二人(笑)

Q:新潟の阿賀野川、福島の只見川など、撮影を振り返っていかがですか。

映画を観るだけではわからないかもしれないが、トイチが住んでいる川べりは本当に鋭い石が延々と敷き詰められているような場所。普通、川や海にある石は丸いのに、尖っている。
これはどこでも話していないが、セカンドの助監督さんが滑って素手で岩に手をついて、指と指の間が裂けてしまい救急で運ばれた。それくらい厳しい所でしか生きる場所がなかったトイチというキャラクターに説得力を与えるのかなと考えた。

Q:なぜ柄本明さんを選んだのか。

15年くらい前、テレビを観ていて、熊本の球磨川という毎年水害が起きている川に唯一のクマガワハチロウという船頭がいると。そのテレビを観た時に、失われていく美しい日本の文化を痛いくらいに感じた。
連絡を取って、2、3週間くっついてビデオを回した。いろんな話を聞いているうちに、いろいろな美しいものが無くなっているんだなと寂しさを感じた。
元々資本主義に対する疑問をちっちゃい頃から持っていて、時間やお金に振り回されることが本当に幸せなんだろうかとクマガワさんを通して感じ、脚本を書いてみた。
それをなぜ柄本さんにしたか。。柄本さんは俳優としてすごく魅力的な人。曲者だけど、役者としてすごく面白い、尊敬できる存在。
テレビを観ているだけでは伝わらない凄さを映画に焼き付けたかった。

小川さん:珠玉の言葉のような‥

いえいえ‥‥もう4本くらいビール飲んでますからねぇ(笑)
すいません、こういう時間なんで。

小川さん:どうぞどうぞ(的なことを)監督も??(聞き逃し)をテーマにやりたいと思うんですが、

ぜんぜんぜんぜん!!もう、ぜんっぜん(このまま)やりましょう!!

Q:英題について

「They Say Nothing Stays the Same」、諸行無常ということなんですね。

小川さん:変わらないものへの愛情を深く感じました。

便利なものが増えて生活が楽になる、便利だからそちらを選んでしまうが、そのせいで確実になくなるものもある。どっちを選ぶかという究極の選択。僕はどっちかを選べと言われると、古い日本の美しさを選ぶと思う。

小川さん:少女が「私は蛍を選ぶ」と言っていましたが。国立の街も大きく変わった‥そのことへの思いが私達にもあるので、私達の胸にも響きました。

この作品は2019年コロナ前に作った。コロナのせいで世界の発展が止まったことがあった。工場やビジネスが止まって空気がキレイになったとか、ベネチアにイルカが戻ったとか、今まで人間のせいで被害を被っていた自然が回復しているように見えた。
それがこの作品が元々伝えたかったテーマでもあったし、コロナの後に観ることが、今までにない説得力を増して、この作品に力を与えてくれている気がしている。

Q:音楽について(ティグラン・ハマシアンとの出会い)

出会いは、僕がすごく好きなスタイリストの北村道子という人から、ジョーくん好きだと思うよと教えてもらった。
PVが『ある船頭の話』の世界観と合っていて、この人なら映画を理解してくれるはずだと思って一方的にメールを送った。
元々日本文化に興味がある人で、改めてアルメニアに行ってティグランの家で2日ほど過ごして、好きな音楽や文化の類似点を話しているうちに友情が芽生えた。すごく控えめな日本人っぽい人。

小川さん:(映画のサントラ)500枚は完売、持っている国立のマスターが私にえばってました。
(え。500枚しかなかったのでしょうか?? 私は人にあげる分とで2枚買ったのですが‥貴重なものだったと改めて認識)

僕は基本的に映画には音楽はつけなくていいと思ってる。音楽をつけると感情を押し付けられる。最低限つけるならここかなというつけ方をしました。

小川さん:映画の最初のシーンから映像だけで見せていました。

そうですね、むしろ感情とは別の音楽のつけ方をしないと、と思っていましたね。

Q:カメラについて(クリストファー・ドイルとの出会い)

出会いはクリスが映画を撮る時に俳優として呼ばれて。今振り返ってもこの映画はクリスじゃなかったらどうなってたんだろうと思う。
僕ら日本人は日本の景色に慣れ過ぎて、何が美しいのか忘れがち。外国人に撮って教えてもらいたいと思っていた。
この作品は僕が監督だったけれども、撮影監督のクリスが裏でコントロールして作ってくれた作品。
この間の『オリバーな犬』っていう作品も本当はクリスが撮る予定だった。クリスも面白いことが好きだから、めちゃめちゃ台本気に入ってくれて、盛り上がって準備してくれていたのに、コロナで日本に入れなくなっちゃって。僕にとってクリスは画的な責任を負ってもらうパートナー、大切な人。

小川さん:(『ある船頭の話』のパンフレットを掲げて)パンフレットも受付で販売しているんですが‥

えっ!!販売してんですか!!

小川さん:もちろんですよ!

まだあるんですか!!

小川さん:ありますよ。

ええーーーーー!

小川さん:キネマ旬報さんから‥

ええーーーーーー!

小川さん:(観客に)今お話にあった出会いを細かく書いてありますので是非‥

!!(笑)書いてあるんだったら訊かなくていいじゃないですか(笑)(笑)

小川さん:(諭すように笑)そういうんじゃないんですそういうんじゃないんです、やっぱり生声でね?(大きな拍手)

ちなみに(パンフレットに)西川美和監督がエッセイを書いていて

小川さん:素晴らしいですね‥!

あれはねぇ、いい文書いてますね

小川さん:いや、(西川監督は)オダジョーが私以上に好きなんだなと思いました!

あははは!!

(ここだけ会話式である程度記録できました)

---------会場からの質問----------------


何でもいいっすよ!

Q(女性):(実行委員の方から本当に名作だから観に来て!と言われて観に来たが素晴らしかった。などの長めの感想の後)監督になりたかったのかなと思うような作品だったので、「映画への思い」と「小さい頃から資本主義に疑問があった」という理由を。

ここでオダギリ監督、感心したように、普通のインタビューでは受けないような質問、こういう質問はなんか震えますね‥!とまで言ったので、わあ‥!と思ったら、

なので真摯に答えたいと思うんですけど‥なんでしたっけ?(笑)(笑)(会場爆笑、確かに女性のお話は長めでした笑)

映画への思いは、簡単に言うと僕は母子家庭だったので、母親が仕事や用事がある時に僕を映画館に預けていた。映画館が幼稚園代わりで映画を観て育った。真っ暗な中、安心できる時間。
映画を身近に感じながら、俳優になって映画に関わって、2000年くらいに仕事を始めるんですけど、2010年くらいですかねぇ、ふと日本映画が行き詰まるんです。
お金が集まらなくなってインディーズが作られなくなって、原作がアニメや小説のお客さんが集まるものだけしか作られない。映画好きの僕からしたらすごく腹立たしいことで、映画をビジネスとしか考えていない状況を憂う思いが、どんどん積みあがっていった。
そんな時に、お金にならない映画を、一緒に作ってくれるという木下グループの木下社長がお金を出してくれ、やっと作れた作品。こういうことは滅多にない。その後、この手の作品で勝負しようという人はいない。映画やドラマの配信も大きくなって、映画に波を戻すというのが本当に難しい中、この作品を作れたことは意味があるが、一石を投じるはずが本当に小さい石になってしまって。。

小川さん:小さくないですよねえ。

でも未だに劇場でかけてもらえるのはありがたいです。僕の「映画に対する希望」が託されている映画。
資本主義に関しては‥僕、キューバが好きで、阪本監督の映画で3か月くらいキューバで撮ったんですけど、初めてキューバに行ったのは25年くらい前、「仮面ライダークウガ」っていうやつの最終回で、カルチャーショック受けまして。
日本だと、子供達は携帯ばっか触ってる。
でもキューバの子供達はパンツ一丁、裸で豚に乗って走り回ってて。そういうふうに育つ子供と、スマホばっかりの子供と、どういう人生がその先続いて行くのかと思うと、僕はやっぱりキューバの子供達の方が未来は豊かだと思う。いろんな意味で、感性、感情、感覚的に豊かに生きていけるんじゃないかなあと。

Q(男性):タイトルのつけ方に込められているものがあれば。

タイトルに関していうと‥テキトーです!(笑)
台本を書き始めて、タイトルをつけなきゃいけないタイミングがあるので、その時に『これでいいか』感覚でつける。『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』もその場でつけたもので(笑)
で、適当につけたタイトルを、英語にして世界に発表する時に、(うわっ!どうしよう)と思うんですよねえ。ちょうど今、『オリバー』のタイトルを考えているところで‥‥めちゃめちゃ苦労してます(笑)
タイトルで話が分かるのも嫌だし、タイトルがテーマを語っているのも嫌だし、とはいえ、キャッチーなタイトルであってほしいし‥といろいろな思いがありますねぇ。

そして‥時間も超過して終了、大きな拍手。
‥と思ったらまた話し出すオダギリ監督

いろんな映画祭があると思うんですけど、ほんとに映画に対する愛情が溢れているものは届きますし、一昨日だったかな、今回の質問状が届いたんですよ。

小川さん:私が書きました。。

ええ。今日質問された内容が書かれていたんですけど、ほんとに誠意を感じるんですよね、その質問に。

小川さん:そんなに喜ばせて‥

愛をちゃんと感じるんですよ。(照れる小川さん)それを読んだうちのマネージャーが、「この映画祭は本気ですよ」と。ズームじゃなくて映画祭に行った方がいいんじゃないですか?って‥(大きな拍手)
それが‥現実になってほんとによかったです。みなさんほんとに今日来ていただいてありがとうございます。

小川さん:ほんとに願いは叶うんだなと思いました。皆様、ありがとうございました!