今日「叫」ジャパンプレミアの様子がニュースで紹介されていましたね!(私が見掛けた限りでは、オダギリのシーンはありませんでしたが‥って当たり前?^^;)
今回は映画祭ということで、お話の合間合間に通訳が入るので、比較的お話の内容は書きとめやすかったのですが(手首に力を極力込めないようにしました!;)、上映後のお話はネタバレらしいものもありますし、マニアックなお話もあったりで、後半は簡単にまとめた内容にしてみます。(と言うか、頭でまとめたものしか既に残っておりませんが‥)
あと、裏話等期待された方もいらっしゃったかもしれませんが、監督に対する質問は、「叫」に関する内容というより、企画や撮影方法に関するお話が主でした。



■第7回東京フィルメックス「叫」ジャパンプレミア
有楽町朝日ホール

流れ:黒沢清監督、役所広司さん挨拶→「叫」上映→プロデューサーの方が司会進行役で監督のお話、会場からのQ&A

<上映前の挨拶>

黒沢監督:本日はこんなにも僕の新作に駆けつけて下さってありがとうございます。
役所広司さんとはこれまで何本も映画を撮ってきました。
一方で僕は幽霊の出る映画もたくさん撮ってきました。
今回役所広司さんと幽霊を正面から激突させてみようと思ってこの映画を作りました。
役所広司ファンの方も、また幽霊ファンの方も(会場から笑い)、ともにこの映画を楽しんでもらえたら嬉しいと思います。

役所広司さん:こんにちは。役所です。(満面の笑みを浮かべつつも、とてもシャイな感じです*^^*)今日は雨の中ありがとうございます。
実はこの「叫」は黒沢監督と7本目です。また呼んでいただけてとても嬉しく思っています。
撮影現場は相変わらず黒沢監督らしく、淡々と静かに進んでいました。
ただ、撮影現場で僕が幽霊に怯えて叫び続ける声が非常にうるさかったと思います。(会場笑い。監督も手で口を押さえて笑っています。黒沢監督にしては結構珍しいシーンでポッ*^^*)
今回はホラー映画を撮るぞと監督にお誘いいただいて出来上がりました。
でもただのホラー映画じゃなく、黒沢監督らしい怖い映画になっていると思います。
どうぞ今日は楽しんで下さい。

マスコミ撮影。定位置につかれるまでの役所さんのお茶目な動き?反応に会場から笑い声が。



その後、上映があり、上映終了後、東京フィルメックスの林ディレクター(女性)、黒沢監督、通訳の方が出て来られて、舞台中央に並んで着席。
(以下、「叫」の重要なネタバレ話はありません)

<上映後のQ&A>

林ディレクター:湾岸というモチーフでの企画はどれくらいの時期から?

黒沢監督:随分前からそういう(詳細なお話がありましたがストーリーに拘わる部分のため省略)アイディアは使えるかもしれないとは考えていた。
それとは違う流れで、3年くらい前、ホラーに拘らなくてもいいが、幽霊が出てくる、これまで観たことのないような幽霊が出てくる映画を撮りたいね、という話をし始めた。
とは言っても、僕はこれまで幽霊を見たことがないのでどうしたものかと悩んだ。(会場笑い)
だがある単純な事実に気づいた。幽霊というが、幽霊も人間だと。
幽霊と以前からあったアイディア(ストーリーに拘わる説明なので省略)を上手く一緒にすることが出来るんじゃないか。それがこの脚本を書き始めたスタートになった。

会場からの質問タイム。
Q:98年の11月の東京国際映画祭のティーチインで、これからはジャンル映画を撮らないと言われていたが。

黒沢監督:「なんか忘れていた過去がよみがえってきた感じで‥」

まさにこの作品の核となる「幽霊」とは「過去の存在である」、というようなお話をされた直後だったので、監督のこのコメントに会場は爆笑です。

黒沢監督:忘れてしまって無責任な話だが、その後の「リング」等、日本のホラー映画がヒットするという時代が来た。僕は予想もしていなかったし、ジャパニーズホラーというジャンルはそれまでなかったですから。
その新しいジャンルで自分の個性を生かせるのか試してみようと思って、そういうジャンルで何本か撮り続けて来たのは事実。
ただ、一方で、98、99年頃から海外の映画祭などに行く機会が増えたが、海外では大体僕が撮っている映画は「日本映画」というジャンル、あるいは「アジア映画」という扱いに収まる。
ジャンルというのは、撮る時に1つの指針になるが、実際に海外などで観られる時には、どんなジャンルなのかを超えて、最新のアジア映画、日本映画なんだと観てくれる。
なので、ジャンルというものに縛られるのはやめようとある時期から思うようになった。

林ディレクター:いわゆるジャンル映画を踏み越えたところに黒沢清監督の映画の面白さがあると思うし、日本映画の「明るい未来」を切り開いて行って下さっているのが黒沢清さんだと思っています。

この時、ディレクターが次の質問者を指そうとして会場を見回し、
「そこの赤いセーターの女性‥‥あれ、女性は挙げてない‥」
というようなことを呟かれたのですが、それに対し監督がすかさず
「赤い服の女性ですか?」と‥。
実は「赤い服の女性」は作品に出てくる重要な存在で、ディレクターの戸惑ったような言い方が、まるで映画の続きを観ているかのような雰囲気を一瞬醸し出したため、監督のさりげない突っ込みもありで、会場はまた爆笑に包まれます。
もちろん私も笑いましたが‥、その一瞬後、何となくゾッとしたりして‥^^;

Q:不気味な建物、何から何まで薄気味悪いロケーションを探すコツ(指示等)は何かある?また、事前に建物を見つけてそれに合わせて脚本を書くのか、脚本を書いてから探すのか。

黒沢監督:どうもありがとうございます。今回のようになんとなく湾岸の埋立地辺りに行ったら何かありそうだというような想像から脚本を書くことはあるが、脚本を書いている時から場所が見つかっていることはまずない。
どうやってそういう場所を見つけるかということは、毎回苦労はするが、ある時不思議なことに見つかる。
これが不思議だが映画作りというもので、なんとも言えない映画作りの醍醐味、スリリングなところ。
僕も車で回るが、スタッフも散って適した場所を見つけて来る。前半はスタッフはいつも暗い顔をしているが、何週間かすると顔が輝く。
この時から映画がスタートする。
僕1人じゃない、たくさんの人の力が働いている一番最初の喜びの部分なので、この点を(質問で)指摘してもらえると本当に嬉しいです。

Q:「CURE」のラストの建物も?

黒沢監督:あれ見つかったんですよ(笑)。よく覚えてます、脚本には「山小屋」と書いていた(笑)。
僕は「信じられないような山小屋を見つけて来てくれ」と言ったところ、ある時見つかった^^ 
(なんだかとてもスゴイ話を、笑みを浮かべた穏やかな口調で仰る監督に(‥かな?私はそうでした)会場笑い)

Q:監督の作品にはホラー要素と社会的な要素があると思うが、どちらの方向から入るのか。監督のスタンスは。

黒沢監督:いつからとははっきり記憶はないが、映画に僕自身が感じている社会的な問題を扱うべきなんじゃないかと思うようになってきた。
1つの理由は歳を取ったということもあるでしょうが、そんなことを思うようになったのは21世紀に入ってから。
20世紀の間は漠然と信じてきた未来が、21世紀に入ったら何か全然違うと思うようになった。それが21世紀に入ってからの僕の日々の悩み。
その実感は作品を撮る度、ささやかではあるが作品の中に入ってしまう。
僕の日々思うことが嫌でも作品に反映してしまうが、それが現在の僕。
何か素晴らしい結論があるわけではなく、疑問提示でしかないが、それに付き合っていただければなと思って映画を撮っています。


ここで、大幅に時間が超過しているということで、質疑応答時間は終わり。時間的にはかなり経っていたように思います。
大体のお話の流れはこんな感じでしたが、監督は私が書いている数倍の言葉でお話しになっていました。

作品にも「アカルイミライ」を思い出す演出がいくつかあり、きっと監督の心の根底にあるシーン(演出)なんだなぁと思ったのですが、監督のお話の中にも、「アカルイミライ」の頃にも話されていたお話、そして「アカルイミライ」という作品そのものを思い出す言葉がいくつもありました。
また、オダギリもよくありますが(笑)、黒沢監督も「決定的に違う」「これまで見たことのない」等々独特の表現をなさる方で、今回それを久々に聞けて(と言っても「ビッグ・リバー」上映のゲストに来られて以来かな)、個人的にはとても嬉しかったです*^^*