今回のナレーションは、必要以上に声が低くならず、いつも以上に言葉に感情が込められているような気がしました。「モノ」や「文化」に対してではなく、人間として語りかける台詞が多かったからかな。
ただ、この印象は毎回自分の感情に左右されているところも大きいと思うので、気のせいかもしれませんが(笑)。

「危機遺産特集」。
冒頭の映像を見て、何年か前、バーミヤン渓谷の巨大な仏像が、タリバンによって爆破されたという映像を見た時に受けたショックを鮮明に思い出しました。
特別よく知っている場所ではなくても、あの大仏の歴史が一瞬で消されてしまったという悲しさと、この先あの大仏が見られる未来は無くなってしまったんだという悲しさ。
今思えば、あの時のショックは、今回の「世界遺産」のテーマに実感としてリンクしていた私の思いだったのかな。そう思えています。


『土で築かれた街は今、土に返ろうとしています。
いにしえの繁栄の記憶と共に。』

オダギリの声で語られたこの言葉に、心で何かが揺れました。
地球の歴史の中では、人間の英知など儚いものなんだ。
ただ、例えそれが歴史の中で簡単に飲み込まれて行ってしまうようなものだったとしても、そこできらめきを放っていた一瞬の時間は、その土の記憶として刻まれていると思いたい。

だから、
修復ならまだしも「復元」という言葉には一瞬疑問を持ちました。
なぜ“天災”による損壊で、大規模な復元など行う必要があるのだろう。それも地球の歴史の一部ではないのか。

でも、オダギリの声が答えをくれた。
『古代から受け継がれた土の文化を未来へと伝えること』

地球の記憶を保存するばかりでなく、人類が生み出した文化の歴史を、人類が積極的に人類へと繋いでいく。それが「世界遺産」なのか。

今更かもしれないけれど、急に目が覚めたような思いがして、胸がドキドキしました。

『危機遺産は改めて僕たちに思い起こさせてくれる。
過去からの贈り物を未来へと受け継ぐ、世界遺産本来の目的を。』

それまで、映像やナレーションによってあちこち飛んでいってしまっていた自分の心が、ラストのオダギリの言葉には、ピッタリ寄り添っていられた気がしました。
これがとても嬉しかった。