(,茲蠡海)
オダギリ:『僕は1映画ファンとして映画に関わりたいと思い続けて俳優をやっている。
僕が役者をやっている時にいつも心がけていることは、無難に芝居せず、いつも何かに挑戦していたいなという気持ちを忘れないこと。
そういう意味でも、受賞作品はそれぞれ挑戦をされていて、いろんな刺激をいただいた』
 
受賞作品「BANBI BORN」については、『ストーリーなどは、審査会議でも賛否がものすごく分かれたが、そのくらい、社会に対するメッセージというものを使っての挑戦だったと思うし、そういう部分に僕はすごく惹かれました』とのこと。
最後の部分のオリジナルは、「そういう部分が僕はすごく惹かれちゃいました。えーーーー ‥それが理由です。」
いつもの唐突さで笑いを巻き起こしていました。
 
その後、司会の荒木さんから、最終審査員がそれぞれ表彰している作品は、その審査員の思い入れが特に強かった作品であるというお話が。
それまで、表彰で壇上に上る審査員の順がなんだか不思議‥と思っていたので、なるほどと。
また、オダギリが表彰した「BANBI BORN」、紹介を聞いただけでも、他の作品に比べてやはり毒がありそうな作品だったので、もう1回なるほどと。
 
その他の結果はこちらの通りですが、グランプリをはじめとする5つの受賞作品は、最終審査員が3時間半討議して決めたとのこと。
また、最終的に“全員一致でグランプリが決定”したのは、PFF始まって以来今回が初めてのことだったそうです。
で、私はと言うと。
やはり受賞作、その中でも複数受賞している作品からグランプリが出る可能性は高いんじゃないかと思っていました。作品を見ていないので、それ以外予想のしようはなかったですけど‥(笑)
でも、最後に曽我部恵一さんが発表した作品は、それまで一度も話題に出ていなかった「あるべらえず うんべると -消え入ぬように-」。場内もちょっとどよめいていました。
この「あるべらえず うんべると -消え入ぬように-」は、「ドキュメンタリー作品」でグランプリを取った初の作品なんだそうです。

呆然とした様子の関監督が舞台に上がられ、表彰、挨拶。
その後、司会者の方から紹介があり、主演のウンベルトさんもステージ上へ。
そこで挨拶を促されたウンベルトさんは、抱いていた小さな女の子をステージに下ろし、恥ずかしそうに俯いて「ありがとうございました」。
女の子はその間に、『おいで』という関監督の腕に向かって走り、監督にしっかりと抱っこされていました。
『6年間撮り続けて来た、人の名前がタイトルのドキュメンタリー作品』とはどういうものか。
その時の私にはまだ全然わからなかったけれど、お父さんから離れて、監督の腕に元気よく飛び込んだ女の子に、その作品の中の人間関係の一端を覗くことが出来たような気がしました。

こうして、グランプリ作品の表彰が終わったところで、「ぴあフィルムフェスティバルアワード2005」の表彰式は終了。その後は、結構長い時間を掛けて、マスコミ撮影会です。
驚いたのは、普通の舞台挨拶とは全く違い、「有名人」と「マスコミ」と「観客」がものすごく近いなということ(笑)。
低い壇上に並んだ人たちを小さく囲むように集まるカメラマン、そしてその回りに小さく集まるカメラ付き携帯を手にした観客。
かなり間近でオダギリ(だけじゃないだろうけど)鑑賞会が出来る状況でした。
でも私はそういうのは苦手なので、わざわざ近寄りはしなかったですけど‥
(あと、話の断片を繋ぎ合わせると、表彰式後、作品について話をしたり、質問したりも出来るような、受賞者、審査員などの関係者が主席するパーティが催されるようでした。)

さて、グランプリ作品「あるべらえず うんべると -消え入ぬように-」。
この日の私は、夜に別の用があり、表彰式が思いのほか長くなっていた時点で、『残念だけどグランプリ作品の鑑賞は途中までで諦めるか‥』と考えていました。
が、あと15分だけ、あと10分、あと5分だけ‥と予定時間を延ばしに延ばし、結局、途中で連絡を入れ、最後まで観てしまいました。

作品に登場する人たちは、みんなカメラの前でくつろぎ、笑い、怒り、涙を流し、カメラがまるで関監督の『目』そのものであるかのように、監督に向かって語りかける。
そんな人たちを、カメラを通してずっと見守り続けて来た関監督の目。その目を通して映し出される「人間」の姿。それらに驚かされ、観ているうちに引きつけられ、圧倒されて行った気がしました。

貧しい中苦労しながらも、子供が好きで、子供が欲しいとずっと願っていたウンベルトさん。
彼にある出来事が起こった時、私は彼とは違う立場でその出来事を考え、とても複雑な思いを抱きました。
でも、表彰式で見た、その時はまだどんな人なのかも知らなかったウンベルトさんと、彼が抱っこしていた小さな女の子のことを思い出した時。
私の中に温かいものが広がり、この作品は忘れられないものに変わりました。

受賞者がステージに上がる時以外場内は暗く、近くの人もよく見えないほど。
でも、私の席からは光るオダギリのブローチがよく見えて、ちょっとした目印のようでした(笑)。
また、『ぱんぱんぱん』とややゆったりめに拍手している手のシルエットもよく見えて、『らしいなぁ』とちょっとおかしかった。